ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

『ヤマト』は「シニア向け」。福井晴敏路線に未来はあるか

こんにちは。ymtetcです。

2021年10月に公開された「新作『宇宙戦艦ヤマト』は40代以上を受け止める作品…福井晴敏が明かすアニメの可能性とは | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]」で、福井さんは『宇宙戦艦ヤマト』を「シニア向け作品」と呼びました。『ヤマト』を「シニア向け」とは、少々過激な表現に思えますね。

では、福井さんのいう「シニア向け」とはどのような意味なのでしょうか。また、このような認識の下で『ヤマト』を作る福井さんの路線は、今後の『ヤマト』にどんな影響を与えるでしょうか。

福井さんは、『ヤマト』を『ガンダム』と比較して、このように述べています。

 ずっと継続してコンテンツとして確立してきた『ガンダム』は20代から40代に見せる作品。アニメ好きな若者も意識して、広い層に放つ。

 一方、20年以上もシリーズが途絶えていた『ヤマト』は40代以上のシニア向け作品です。昔は大人向けでハードなエンタメ作品はたくさんありましたが、40代~60代はアニメや実写で、ニーズとして置き去りにされている世代だと思います。

ガンダム』が「アニメ好きな若者」を視野に入れた作品であるのに対し、『ヤマト』は「40代以上のシニア向け」作品。すなわち、福井さんは『ヤマト』を「アニメや実写でニーズとして置き去りにされている」「40代~60代」に向けた作品としてリメイクしているのです。これは、『ヤマト』を「アニメ好きな若者も意識」した作品として蘇らせようとした『2199』の方針とは一線を画します。ある意味、『ガンダム』と『ヤマト』で棲み分けをしようとしているわけです。

福井さんのこの発言を読んだとき、私は大いに失望した一方で、妙に納得がいきました。『2199』の頃はあれほどまでに同世代に勧めていた私が、なぜ徐々に「若者への世代交代は無理だ」と考えるようになったのか。『ヤマト』は福井さんの手によって、徐々に「アニメ好きな若者」を意識しない作品へと変わっていったのです。

だからといって、この路線に未来がないかというと、そうとも限りません。

例えば、これが単なる「ヤマト世代」向けに終われば未来はないでしょう。ヤマト世代は、じきにいなくなる購買力を失う存在だからです(※コメントの指摘を受けて修正)。

大切なのは「ニーズとして置き去りにされている世代」との発想を忘れないことです。エンタメが若者中心で進んでいくとすれば、今後何年が経とうとも、常に40代~60代の「ニーズとして置き去りにされている世代」は現れます。『ヤマト』も、常に更新されていく「シニア世代」に向けた作品であり続ければよいのです。

こうして考えると、『2202』後半あたりから、徐々にデスラーが主人公となりつつあることも頷けますね。

福井さんの視野に入っていない世代の私からすれば、正直あまりいい気持ちのしない「シニア向け」発言でしたが、裏を返せば「もっと大人になればまた違った形で『ヤマト』を楽しめるかもしれない」ということ。ポジティブにとらえておきたいと思います。