ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト2199】賛否両論だった『方舟』が、今はそう見えない理由

こんにちは。ymtetcです。

先日の「『2199』出渕体制から『2202』福井体制へ」の記事に対する反響のなかで印象的だったのが、「方舟の興収がよくなかった」ことに驚いた、というものです。

私は『方舟』の年に受験生だったので、当時の様子は完全に把握できていませんが、当時、『方舟』に賛否両論があったことは覚えています。

今日は、なぜ公開当時『方舟』が賛否両論だったか、そして、なぜ今はそうは見えないのか、について考えていきます。今回は検証ではなく、『2199』当時2chの『2199』スレに常駐していた経験から(笑)、記憶を辿って書いていきます。

当時賛否両論だった『方舟』が、現在はそう見えない理由。それは、現在『方舟』を語っている人の大半が『2199』ファンだからだと考えます。

『方舟』公開当時の批判点は、おおよそ「大和ホテル」パートに集中していました。

これはもちろん、作画上の問題点が「大和ホテル」パートに集中していたこと、また脚本の流れからしてやや冗長に感じやすいパートだったことも関係があります。しかし私は、「大和ホテル」パートが『2199』第9話の演出と第14話の世界観を継承していたことが、批判意見の集中した理由だと考えます。

〇『2199』第9話・第14話への批判

『2199』が劇場で先行上映されていた当時、最もファンの賛否を分けたのが第9話と第14話でした。

第9話の「絵本」演出は『ヤマト』としては斬新な演出でした。また、旧作を大きく改変した初の回だったこと、また第7話に指摘された「悲壮感不足」とも連動して、第三章全体の評価そのものが賛否両論となっていました。

第14話の特撮風演出は、旧作を大きく改変した回だったことに加え、特撮風演出が当時リアルタイムで進行していた『エヴァンゲリオン』を想起させやすかったこと、また「魔女」といった旧作ファンに馴染みのない設定から、出渕監督は『宇宙戦艦ヤマト』リメイクの誇りを捨て、自分の趣味に走ったのではないかと批判を受けました。『ラーゼフォン』でやるならいいが、『ヤマト』リメイクでやるな。そういう批判です。

もちろん、第9話は旧作ビーメラ回の主題を継承していますし、第14話の元ネタは旧作初期案の「イローゼ」や松本零士さんの『永遠のジュラ』で、どちらも旧作由来の成分が多く含まれている回です。しかし、当時はそれを理解していない人もいましたし、理解していたとしても「この演出&設定はないよね」との意見を持つ人もいました。

今でこそ『2202』がやりたい放題やってくれたので、『2199』は相対的に「旧作の世界観を守ったまっとうなリメイク」として語られますが、当時はリメイク派と旧作派で論争が絶えず、「信者」「アンチ」「マンセー」「赦せんスレでやれ」といったネットスラングが飛び交っていました。特に第9話と第14話(と第23話)においては顕著でした。

『方舟』の「大和ホテル」パートは、第9話と第14話を継承していたため、それに不満を持っていた人たちからすれば、「出渕総監督がまたやらかした」「『ヤマト』を捨てて自分の趣味に走った」と感じたのではないでしょうか。

〇「ヤマトファン」から「リメイクヤマトファン」へ

『2199』『方舟』まではリメイク派と旧作派に分かれていたヤマトファンは、『2202』で再編されたと考えます。

かつて「リメイク派」だった『2199』ファンは「『2202』を受け容れたファン」と「『2202』を受け容れなかったファン」に分かれました。そして、かつて「旧作派」だったファンは、「『2202』支持に転じたファン」と「引き続きリメイクに興味がないファン」に分かれたと考えます。ただ、『2199』に対する批判点を考えますと、『2202』は『2199』以上に旧作を改変したため、かつての旧作派が『2202』に定着できたとは考えにくいです(『2199』のサービスシーンに嫌悪感を抱いていた人は別かも)。むしろ『2202』で、いよいよリメイクには愛想を尽かしたのではないでしょうか。

つまり、当時『方舟』を批判していた反リメイク的なヤマトファンは、現在はリメイクそのものに興味を興味を持っていない可能性が高いと考えます。ゆえに、現在リメイクヤマトを論じる人たちの間では、『方舟』はあたかも賛否両論がなかった作品のように感じるのではないでしょうか。