ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

「若い世代向け『宇宙戦艦ヤマト』」構想において必要な視点

こんにちは。ymtetcです。

『2199』以来のリメイクシリーズだけでなく、平成ヤマトの起点となった『復活篇』においても、近年の『宇宙戦艦ヤマト』には「若い世代向け」の発想が大なり小なり盛り込まれています。今後も「若い世代向け『宇宙戦艦ヤマト』」の企画・構想は形を変えて登場してくるものと思います。

そこで今日は、「若い世代向け」ヤマトを構想するにあたって、最低限もつべき視点は何か、を考えていきます。

「若い世代向け」ヤマトの構想で、最低限必要なのは「『若い世代』の定義」です。これがなければ、絶対に「若い世代向け」は成功しないと考えます。

〇「若い世代」という広い言葉

そもそも、「若い世代」という言葉が意味するものはとても広いです。

例えば、高校3年生が高校1年生に対して「若い」と言うこともあれば(本当は「幼い」と言うべきですが)、80代の高齢者の多い地域で60代が「若い」と言われることもあります。

「若い」という言葉の基準は絶対的な数値である年齢なのですが、その数値を解釈する過程で、相対的な基準が用いられていることが分かります。

宇宙戦艦ヤマト』を観る「若い世代」といっても、それが10代のような絶対的に「若い世代」なのか、それとも50代のヤマト世代と比較した、40代までの相対的に「若い世代」なのかは、もっと深堀して考えなければ分からないのです。

〇近年の『ヤマト』における「若い世代」

近年の『ヤマト』においても、「若い世代」の定義は揺れ動いてきました。

現在進行中の福井ヤマトにおいて、若い世代を多少なりとも意識するようになった『2205』も、「『2199』以来のファン」との表現にとどめています。

その『2199』は、「ヤマト世代よりも若いSFアニメファン」を視野に入れていたと思われます。ヤマト世代よりも若いSFアニメファンは、『ヤマト』冬の時代において、『ガンダム』『マクロス』『エヴァンゲリオン』といった後発の作品を楽しんできた幅広い層です。彼らをターゲットにしていたからこそ、『2199』は、設定・考証面でこれらの作品に匹敵するだけのクオリティを追求していたと考えます。

さらにさかのぼって、平成ヤマトの起点となった『復活篇』はどうでしょうか。

(氷川さん)今回は古代進が家族のいる38歳の大人として登場します。その設定の意味は?

(西﨑監督)ちょうど男盛りだという程度の意味です。もちろんかつてのヤマトファンが見にきてくださるという、常識的な期待もこめています。父さんがご覧になり、「やっぱり良かったよ。おまえもいっしょに観に行こう」と、自分の子どもの手を引っ張ってもう一度劇場に来てくれる。そうしたことも想定し、両方の世代に通用するものとしています。

この西﨑さんの言葉から推測するに、『復活篇』は、「ヤマト世代の子どもたち」をターゲットに内包してます。この場合、『復活篇』における「若い世代」は、『2199』のそれよりもずっと限定的な存在だと言えます。

〇定義づけが肝要

新作『宇宙戦艦ヤマト』に「若者向け」の視点を盛り込むにあたっては、その定義づけが肝要になると考えます。

これからいよいよ老年に差し掛かるファン第一世代には郷愁と活力を、『2199』以来の若いファンには現在進行形の並走する青春を。そして、両者が隔てなく感じているであろう生き辛さに対して、それでも頑張ろうという思いを共有できるドラマを。

先述したように、『2205』&『3199』は部分的に「若者向け」の視点を盛り込んでいました。福井さんが「『2199』以来のファン」と明言していることから、『2205』と『3199』には、両作品を『2199』が好きなファンにも納得してもらえるように、との大方針があることが分かります。

また、「両者が隔てなく感じているであろう生き辛さ」との表現から考えると、世代を超えたドラマを提示することで、『2199』とは異なるドラマも『2199』ファンに楽しんでもらおう、との考え方も見て取れます。そこでは、若者だけをターゲットにしたドラマではなく、世代を超えた普遍的なドラマが志向されています。

そう考えると、「若者向け」の方向性は依然として消極的だと言えますね。