ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

炎上事件はなぜ起こったのか:UVERworld ×『宇宙戦艦ヤマト』

こんにちは。ymtetcです。

テレビ版『宇宙戦艦ヤマト2199』後期オープニング主題歌「Fight for liberty」は、放映当時、少なからず批判にさらされました。

renote.net

今日は、UVERworldの『2199』主題歌「Fight for liberty」がなぜ当時炎上したのかを考えていきます。

〇なぜ炎上したのか

<1:ヤマトファン側の要因>

当時のヤマトファンの間には、『宇宙戦艦ヤマト』のオープニング主題歌は「宇宙戦艦ヤマト」でなければならない、とする考え方が根強くありました。

歴史的に見て、テレビ版『ヤマト』の主題歌は常に「宇宙戦艦ヤマト」でした。それは、作品の主題が変わっても変わることはありませんでした。『ヤマト』は様々な著名歌手が関わったシリーズ作品ではありますが、いずれもエンディング主題歌や挿入歌・イメージソングにとどまりました。

UVERworldは、『ヤマト』のオープニングで初めて「宇宙戦艦ヤマト」以外のメロディを響かせたアーティストになったわけで、ある意味で批判は不可避だったと言えます。

また、当時の『2199』ファンは、既に一度「主題歌変更騒動」を経験していました。

odin2099.exblog.jp

しかも、この騒動で『2199』ファンは「ファンの声で主題歌変更を阻止する」経験をしています。この事件を経て、むしろ保守的な姿勢を強めたファンも少なくないはずです。

<2:楽曲側の原因>

www.uta-net.com

「Just war(正義の戦争)」から始まる「Fight for liberty」の歌詞は、「戦い」をテーマにしていました。歌詞については、時間経過とともに「デスラーの心情に当てはまるのでは」などの解釈も登場しましたが、やはり歌詞をパッと見て、『2199』の世界観を想起することは難しい現実があります。

さて、この楽曲、当時はアーティストへの批判もありましたが、今インタビューを読むと、必ずしもUVERworldに誠意が欠けていたようには思えません。

———盛り上がる曲?
TAKUYA∞ はい。あと『宇宙戦艦ヤマト2199』の第二期オープニング主題歌なので、歴史あるアニメ作品ですから、その世界観も考えながら作りました。

(略)

———そういうふうに、ある程度の枠組みがあったほうが作りやすいですか?
TAKUYA∞ 作りやすい時もありますけど、作りにくい時もありますね。今回は難しかった。
———というと?
TAKUYA∞ 自分たちが思うとおりに音楽を作って、それが心地よくて、曲作りの本当の在り方ってこういうものだなって思ったのがアルバム『THE ONE』なんです。そのアルバムを出した後の1枚目のシングルということもあって、自分たちの音楽を待ってくれている方もたくさんいる、『宇宙戦艦ヤマト』のファンの方もたくさんいる、その両方を満足させないといけないと思って。要は気負っていたんだと思います。
———肩に力が入ってしまって?
TAKUYA∞ はい。未熟でしたね。

Music Unlimited | ソニー

また、よく批判の対象となるのが以下の発言ですが、

ボーカルのTAKUYA∞さんは「お話を頂いた際は、誰もが知っているアニメという事のプレッシャーもありましたが、曲創りにおいてはなるべくそれを排除する事を意識しました」「数あるアーティストの中からUVERworldを選んでいただいたからには、それに応えられるよう"自分達らしさ"を出す事に専念し、生まれたのが今回の楽曲になります。(略)と語る。

「宇宙戦艦ヤマト2199」新OPはUVERworld「Fight For Liberty」 7月21日オンエア | アニメ!アニメ!

排除しようとしたのは、「誰もが知っているアニメという事のプレッシャー」であると判断すれば、先の「気負っていた」発言とも繋がってきます。1か月かけて作り上げた楽曲とあって、誠意が必ずしも欠けていたとは思いません。

この楽曲がヤマトファンに批判されることになった最大の要因は、むしろこちらにあるでしょう。
———『番組側のスタッフから何か注文はありましたか?
TAKUYA∞ 特になかったですね。戦いのシーンがあるので、というくらいです。
実際のところ、「番組側」のスタッフとUVERworld側の間でどのようなやり取りがなされたのかは分かりませんが、少なくともアーティスト側には「番組側」からの適切なサポートがなされていなかったことが分かります。「戦いのシーンがあるので」。その程度ならば、確かにあの歌詞になってもおかしくはないのです。
さらにいえば、むしろ「戦いのシーンがあるので」とリクエストされたこの楽曲はまだいい方で、テレビ版『2199』の主題歌は基本的に作品と無関係な楽曲が使われています。楽曲が炎上した根本要因は、テレビ版『2199』の「番組側」の不誠実な態度にあった、と見てもいいのではないでしょうか。

<3:映像面の要因>

最後に、このオープニング主題歌に「新規映像が用意されなかったこと」も、当時評価されなかった要因の一つであると申し添えておきたいと思います。先に言及したエンディングには、麻宮さんの見事なビジュアルが添えられており、不誠実な主題歌タイアップを中和する働きをしてくれています。それがなかった点も、「Fight for liberty」の不運なところだったと言えますね。

 

このように、ファンが保守的であったこと、楽曲が作品に寄り添っていなかったこと、映像が新しく用意されなかったことが、この炎上事件を引き起こした要因だと考えます。

作品に無関係な楽曲を起用する不誠実なタイアップは、かつては一般的でしたが現在では減ってきている感もあります。『SPY×FAMILY』に対するofficial髭男dismの楽曲や、『水星の魔女』に対するYOASOBIの楽曲は見事でした。

テレビ版『2199』の時期は過渡期だったかもしれませんね。

 

次回の記事では、この事件が示した「当時の『ヤマト』の立ち位置」について考えていきます。