ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト3199】福井さんの語る「抵抗」の意味

こんにちは。ymtetcです。

starblazers-yamato.net

『ヤマトよ永遠に REBEL3199』のポスターには、総監督・福井晴敏さんの、こんな言葉が掲載されています。

ヤマトは抵抗の物語です。
一方的に境界を侵し、服従を強いる他者への抵抗。
人を、社会を無惨に蝕む、理不尽な天災への抵抗。
それらと向き合い、戦ううちに、いつしか自由も人間性も犠牲にし、なにを守ろうとしていたのかもわからなくなってしまう。やさしさと表裏一体の、人の愚かさに対する抵抗――。
最初の船出から半世紀を経て、その抵抗の物語は、我々の明日を左右する現実になりつつあります。
そんな時代に語られる、五十年目の宇宙戦艦ヤマト――スタッフ一同、魂を削って紡ぎあげています。
ご期待ください。

「ヤマトは抵抗の物語です」と言い切る福井さん。

私はこの言葉を見た時、『2202』のキーワード「愛」を思い出しました。

『ヤマト2202』が描いた「愛」

「『2199』の続編」は、「愛」をキーワードにするらしい……そんな情報を耳にしたのは、『航海日誌』で彰司さんが続編構想を語った頃でしょうか。私はそれを聞いて、少しだけ、不安がよぎったものです。

というのも、私が当時イメージしていた「愛」は、家族愛や恋愛、隣人愛といった、「やさしさ」「愛情」の側面に限定された「愛」の姿でした。

しかし、実際に登場した『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』は違いました。『2202』が描いた「愛」とは、人間が持つ「心」、「人間性」を指していました。それゆえ、『2202』で描かれた「愛」のあり方は非常に多岐にわたりました。

このように、福井さんは、作品のキーワードに何重もの解釈の余地を残す手法を意図的に使ってきているように思います。

では、『3199』のいう「抵抗」とは、どう解釈するべきでしょうか。

「抵抗」とは「たたかい」である

福井さんのメッセージを読んだとき、私は福井さんが「戦い」や「闘い」の意味で「抵抗」を使っているように感じました。

今回、福井さんは三つの「抵抗」を挙げています。

  1. 一方的に境界を侵し、服従を強いる他者への抵抗
  2. 人を、社会を無惨に蝕む、理不尽な天災への抵抗
  3. それらと向き合い、戦ううちに、いつしか自由も人間性も犠牲にし、なにを守ろうとしていたのかもわからなくなってしまう。やさしさと表裏一体の、人の愚かさに対する抵抗

下線部に注目すると、一つ目の「一方的に境界を侵し、服従を強いる他者への抵抗」と、二つ目の「人を、社会を無惨に蝕む、理不尽な天災への抵抗」は並列関係にあり、三つ目の「やさしさと表裏一体の、人の愚かさに対する抵抗」は、一つ目・二つ目の「抵抗」を続けるうちに陥ってしまう「愚かさ」への「抵抗」を指していることが分かります。

ここで思い出されるのは、『2202』のズォーダーです。ズォーダーは人間に裏切られ、愛する仲間・愛する妻・愛するわが子を何もかも失ってしまいます。ズォーダーは他者想いの「やさしさ」を持っていたがゆえに、「人間性」=「愛」を否定するに至りました。このエピソードを想起させますね。

さて、先の「三つの『抵抗』」に話を戻すと、福井さんは、

  • それらと向き合い、戦ううちに、いつしか

この段階で、既に「抵抗」を、「戦う」と言い換えていることが分かります。

氷川さんと彰司さんによるヒント

この視点は、公式HPのイントロダクションページで、福井さんと並んでコメントを寄せている氷川竜介さん、西﨑彰司さんのコメントにも見られます。

氷川さんはこう述べます。

キーワード「REBEL(反逆)」とは、はたして何を意味するのか? 思い起こせばヤマトの物語は「絶望的な運命への反逆」から始まった。

氷川さんは、第1作『ヤマト』のイスカンダルへの旅路を「絶望的な運命への反逆」と言い換えています。

彰司さんも、こう述べます。

ヤマトと地球の人々は、巨大な“敵”に蹂躙され翻弄されながらも、懸命に立ち向かっていきます。

彰司さんは、『3199』の物語を「巨大な“敵”に蹂躙され翻弄されながらも、懸命に立ち向かって」いく物語だと述べています。

私はここに、「抵抗」=「立ち向かっていく」=「たたかい」の構図があると考えます。イスカンダルへの航海は「反逆」である……これだけでは否定したくなる文面ですが、「絶望的な運命への反逆」と聞けば、納得してしまいますよね。

福井さんと『3199』にとっての「抵抗(REBEL)」も、ある程度、広がりを持った言葉なのではないか?と考えます。

『2205+3199』企画書のヒント

なお、『2205』全記録集には「『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』(仮)『ヤマトよ永遠に REBEL3199』(仮)企画メモ」が収録されています。基本は『2205』の企画書になりますが、若干ながら『3199』の展開を匂わせる記述もあります。

中には「抵抗」に関連する言葉もありました。

その行く末に待つのは、リメイク・シリーズ『完結編』で明らかにされるであろう、古代アケーリアス人の想像を絶する真意。だが、それがどんなものであれ、ヤマトは人間に寄り添い続ける。年々肯定しづらくなるであろう現実に抗い、人々の心の砦として存在し続ける……。(太字は引用者)

ここでは、「年々肯定しづらくなるであろう現実」への「抗い」=「抵抗」が語られています。ポイントになるのは、前後の文章です。「ヤマトは人間に寄り添い続ける。」「人々の心の砦として存在し続ける……。」主語が省略されていることから、二つの文章はほぼイコールの関係にあると感じました。

つまり、ヤマトとそのクルーが「人間に寄り添い続ける」こと、「人々の心の砦として存在し続ける」ことこそが、「肯定しづらくなるであろう現実」に対する「抵抗」。この解釈は、『2205』『3199』が「『2202』が描いた人間論のその先を目指す」としている、福井さんの言葉にも合致します。

「肯定しづらくなるであろう現実」に対する「抵抗」。

これは『3199』のテーマの一つと言えそうです。