ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

続・ヤマト2202と銀河:②「さらば」とはシリーズ史上最初の『復活篇』である!

  • はじめに

 前回の記事では、波動エンジンとコスモクリーナーを、他の存在が有さない、ヤマトの「特殊能力」に位置づけ、パート1におけるヤマトを「特殊能力型人類最後の希望」と位置づけました。

 

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  シリーズを時系列順に取り上げることにしている本メモですから、今回の記事で取り上げるのは『さらば宇宙戦艦ヤマト』(以下、「さらば」)です。この「さらば」は、「ヤマト2202と銀河」の「人類最後の希望」論においても特別な立ち位置を持つと紹介しましたが、

 

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  これは「特殊能力」という観点でも特別な価値を持っている作品です。よって、紹介を後に回すことも考えましたが、今回はメモを蓄積していくことに主眼を置いていますから、その点に関しては下手に工夫を加えずに行きたいと思います。

  • 「特殊能力」を奪われて

 ここで思い出さなければならないのは、「ヤマト2202と銀河」シリーズで指摘した「さらば」が持つ構造です。この「さらば」という作品は

 

地球政府から蚊帳の外と見なされていたヤマトが、パート1と同じ「人類最後の希望」へと復活していく

 という構造を持っています(前掲「ヤマト2202と銀河」記事③参照)。これは「特殊能力」の観点からも整理することが出来るのです。私は前回の記事で、パート1のヤマトが波動エンジンという「特殊能力」を持っていたと指摘しました。しかし、「さらば」のヤマトはこの「特殊能力」を奪われています。

  • 「特殊能力」

 冒頭でも少し触れましたが、「特殊能力」が「特殊能力」足り得るのは「他の存在が有さない」能力であるという条件が成立する時に限られます。「さらば」のヤマトもパート1の時と同じように波動エンジンを搭載していますが、この波動エンジンはヤマトだけではなく、アンドロメダをはじめとした地球艦隊もまた装備しています。この時点で、波動エンジンは「特殊能力」ではありません。

 地球が復興したことでコスモクリーナーDも用無しとなり、波動エンジンも「特殊能力」ではなくなった訳ですから、「さらば」のヤマトは当初、何らの「特殊能力」を持たない存在なのです。

 そんなヤマトも、テレサと会い、地球艦隊の全滅を目の当たりにして、単艦白色彗星に立ち向かう道を選びます。そして、「断固として戦う!」と宣言します。そうしてヤマトは「人類最後の希望」となります。

 ここで重要なのは、このヤマト(古代進)の選択に対して、テレサが現れ、ありがとう、一緒に参りましょう、と言ったあのシーンです。要は自らの反物質の肉体でヤマトに力を貸すということ。この時、ヤマト(古代進)は自らの選択によってテレサの力という「特殊能力」を得たことになります。

 とすると見えてくるのは、「さらば」という作品のもう一つの構造です。それは、「特殊能力を失った(パート1のような「特殊能力型人類最後の希望」ではなくなった)ヤマトが、再び特殊能力を得て、特殊能力型人類最後の希望として散る」というストーリー。「特殊能力」という観点から見ても、「さらば」は宇宙戦艦ヤマト・復活の物語、すなわちシリーズ史上最初の『復活篇』なのです。

 宇宙戦艦ヤマト・復活の物語としての「さらば」には、こんな「特殊能力」もあります。それが「拡散しない波動砲」つまりヤマトが搭載する旧型波動砲です。

 何故こんなに扱いが小さいかと言うと「ぬか喜び」に終わったからなのですが、とはいえ、ヤマトの旧型波動砲が白色彗星に一矢報いるあのシーンから既にヤマトは「人類最後の希望」。無視はできません。ヤマトという旧型の艦艇が装備していた旧型の兵器が「特殊能力」になるという、非常に象徴的な場面ですから。

 ロートルの大逆転ドラマ! そんな側面も「さらば」にはあると言えますね。

  • おわりに:ヤマト2という存在

 最後に『宇宙戦艦ヤマト2』(以下、ヤマト2)を少し取り上げたいと思います。

 ヤマト2については、「ヤマト2202と銀河」記事において、「人類最後の希望をヤマトではなくテレサに置き換えたことでさらばの魅力を骨抜きにした」と指摘しました。これは「特殊能力」に関しても同じことが言えます。「さらば」を観た当時の子供達から、「テレサが一人で自爆すればよくね?」という声が出たという話は有名です。ある意味その声に応えた形となったのがヤマト2なのですが、結局の所この改変が「さらば」の魅力を骨抜きにしています。

 「特殊能力」という観点から整理してみますと、「さらば」においてもヤマト2においても「特殊能力」=テレサの力、なのですが、「さらば」ではそれがヤマトに与えられるのに対してヤマト2ではヤマトに与えられないのです。つまりヤマトが「特殊能力」を奪われたまま、再び新しい「特殊能力」を得ないで物語が完結してしまうということ。これはまさに、「特殊能力型人類最後の希望」という観点からもヤマト2が「さらば」の「復活」要素、カタルシスを骨抜きにしているということです。

 このように、「さらば」が持っていた様々な魅力のうち一つは「時代遅れの烙印を押された宇宙戦艦ヤマトが復活していく」というカタルシス的魅力だと言えます。

 

「さらば」とはシリーズ史上最初の『復活篇』である!

 というセンセーショナルな副題を付けたのはそのためです。

 このことは「ヤマト2202と銀河」でも確認したのですが、今日は「特殊能力」から改めて論を起こすにあたって、さらに強調しておきました。

 最後にヤマト2について触れましたが、これは逆に、「特殊能力をヤマトに付与すればヤマトが生存しても一定のカタルシス的魅力発動が期待できた」と考えることもできます。この事は、ヤマト2202の現在と未来を見ていく上でもヒントになることでしょう。