ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

最新インタビューで『ヤマト2205』を語る

○はじめに

こんにちは。ymtetcです。

昨日の『2202』公式Twitterに投稿された画像で、『ヤマトという時代』にさりげなく「ボラー」(ネタバレかも?)が登場すると明かされました*1。話題作りとしてはよかったと思います。

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さて、今日もこちらの記事について考えてみたいと思います。この記事では『ヤマトという時代』が中心に語られていましたが、一方で、『2205』についても一部語られていました。今日は『2205』について考えていきましょう。

○『新たなる旅立ち』であること

まず、福井さんは『2205』について、

福井さん 旧作の「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」を見た方の期待にはほぼ応えているはずです。ただ、やっていることが一緒でも言っていることが違います。

宇宙戦艦ヤマト:現代の鏡像としての総集編 「2205」はどうなる!? 福井晴敏、山寺宏一に聞く - MANTANWEB(まんたんウェブ)

と述べています。「『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』を見た方の期待にはほぼ応えている」「やっていることが一緒でも言っていることが違います」……いずれも、『ヤマトマガジン』で見かけたフレーズなので、比較してみましょう。

タイトルの「新たなる旅立ち」というキーワードが持つ意味が、旧シリーズよりもビビットになっていると思います。

(『STAR BLAZERS ヤマトマガジン 9号』株式会社ヤマトクルー、2020年11月、13頁)

これらの言葉は、『2205』が旧『新たなる旅立ち』のリメイクであることを示すものであり、反面、旧『新たなる旅立ち』とは少々異なる「新たなる旅立ち」を描くことを示すものでもあります。

『2205』は、原作が「不朽の名作」ではないこともあり、どこまで原作に忠実にリメイクをしてくるのかは不透明でした。しかし、これらの情報を踏まえると、『2205』はそのストーリーの大枠を原作から引き継ぐことが予想されます。「新たなる旅立ち」については、次節以降の内容と併せて、最後に考えてみます。

○『2202』の反省

次は、「やっていることが一緒でも言っていることが違います」の部分に注目します。これも『ヤマトマガジン』で登場したフレーズなのですが、『ヤマトマガジン』においては、『2205』の話ではなく『2202』の話の中で登場しているのが興味深いところです。

『2202』の時は、(略)「言っていることは違うけど、やっていることは同じ」というプランで進めていたんですが、いざフィルムにしてみたら、やっていることも相当違っていたってところがあったんですよ。

(『STAR BLAZERS ヤマトマガジン 9号』株式会社ヤマトクルー、2020年11月、13頁)

ここでは、福井さんが『2202』の反省に則って『2205』を作ろうとしていることをポジティブに捉えましょう。福井さんにとって『2205』は、『2202』で果たせなかった「言っていることは違うけど、やっていることは同じ」作戦を完遂するための、一種のリベンジでもあるのかもしれません。

○「希望」

さらに、山寺さんと福井さんからは、『2205』のキーワードが一つ明かされました。「希望」です。

山寺さん 頭から大変なことになっていますよ。いきなり疲れました(笑い)。ええ!ということが起こって、次に希望の光が見えて……とゾワゾワしたところもあります。

福井さん 震災後10年の気分が「2202」としたら、不安が続く時代に描いたのが「2205」です。今の状況を捉え直しています。希望という言葉が空回りしがちだけど、言葉の重さ、大事さを確認できるはずです。

宇宙戦艦ヤマト:現代の鏡像としての総集編 「2205」はどうなる!? 福井晴敏、山寺宏一に聞く - MANTANWEB(まんたんウェブ)

『2205』では、「希望」が一つのテーマになるようです。『2202』でも「希望のないものは作りません」と述べていた福井さんですが、今回は「言葉の重さ」「大事さ」にも言及しているため、より「希望」が大きなテーマになってくるのではないでしょうか。

さて、「希望を描く」物語には色々ありますが、私はおおよそ二分されると考えています。

一つは、困難を乗り越えた先にある明るい未来を描く物語。もう一つは、これからも続く困難の中で生き抜くために必要なものを描く物語です。私は、福井さんのやりそうな物語は後者なのではないかと考えています。

福井さんは「希望」と対比する言葉として「不安」との言葉を挙げています。「不安が続く時代」とあるように、この「不安」は「時代」レベルで「続く」もののようです。恐らくは今の「禍」に合わせて語ったものと思います(『2205』それ自体は「禍」以前の作品なのですが)。

実写版『ヤマト』に、「ヤマトが飛べばせめて人類は希望を持って死んでいくことができる」旨のセリフがありました。ヤマトが実際に人類を救えるかどうかは問わない、人類を救うために戦っている船があるという事実こそが地球人類にとっては「希望」なのだというわけです。この「希望」は、「不安」の原因そのものを取り除けるものとは限りませんが、その「希望」が心にある限り、「不安」に耐えて生き続けることができるというものでもあります。福井さんが描きそうな「希望」は、こちらのような気がしますね。

少々回り道になりましたが、『2205』は「不安」を描いたハードな物語になりそうです。そして劇中で、そんな「不安」の中でも人が生き続けるための「希望」が提示されるのではないでしょうか。そうした「不安の中の希望」が、「新たなる旅立ち」という前向きなフレーズと共に描き出されていくのかなと思います。

○「新たなる旅立ち」を描く『新たなる旅立ち』

そもそも、「やっていること」と「言っていること」とは一体何なのか。

まず、「やっていること」とは、劇中の「出来事」を指していると思います。

恐らく『2205』でも暗黒星団帝国が何らかの目的でイスカンダルガミラスを攻撃するし、古代守は登場しませんが、守とスターシャの子どもも何らかの形で登場するのでしょう。そして多分、デスラーと古代の友情物語や、デスラーからスターシャへの想いも描かれるし、艦隊戦もあって、ラスボスはゴルバなのでしょう。さすがにここまで同じかどうかは分かりませんが、「やっていることは同じ」だとすれば、これくらいのことをやってもおかしくありません。

仮にここまで「やっていることは同じ」なのだとすれば、『2205』はどの部分で勝負をするのか、ということになります。それが「言っていること」の部分だと考えます。

「言っていること」とは、すなわち作品のテーマだと思います。福井さんはこう語っています。

(略)”お話しそのもの”については、当時の制作者たちが伝えようとしていたことを、細かく”解体”したうえで、今の人々に適したメッセージにしていかなければならないと思っていますね。

 (『STAR BLAZERS ヤマトマガジン 9号』株式会社ヤマトクルー、2020年11月、13頁)

『2205』は、「時に西暦2205年。地球は~」といった大まかな「あらすじ」は旧『新たなる旅立ち』を踏襲しつつも、その「出来事」を通して描かれるテーマは、旧とはまた異なるものを提示していくと思われます。

もちろん戦争をしているわけですから、楽しいお話ではありませんが、以前よりも”爽やか”な「新たなる旅立ち」を感じていただけるのではないでしょうか。

 (『STAR BLAZERS ヤマトマガジン 9号』株式会社ヤマトクルー、2020年11月、13頁)

今回のブログを書くにあたって、(本編を観る時間がなかったため)旧『新たなる旅立ち』の「DELUXE MOOK」を読み直しました。改めてストーリーを思い返してみると、旧『新たなる旅立ち』で「新たなる旅立ち」と呼べる要素は、確かに多くあるのですが)物語のメインに据えられていません。ドラマの中核にあるのはやはり多種多様な「愛」であって、作品そのものは、むしろメタ的な「宇宙戦艦ヤマト』シリーズにとっての新たなる旅立ち」という側面が強いと思います。リメイクをするにあたって、そこを調整してくる可能性は極めて高いと考えます。

『2205』は、旧作シリーズの「新たなる旅立ち」として原作が果たしたメタ的な役割を継承しつつ、さらに劇中の「出来事」を踏襲しながらも、よりドラマの中核に「新たなる旅立ち」を据えた物語になっていくのではないでしょうか。

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【ヤマト2202】ガトランティスが「スケールダウン」した背景 - ymtetcのブログ

*1:

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