ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト2205】主題歌は『方舟』×『2202』

こんにちは。ymtetcです。

『ヤマト2205』の劇中歌・主題歌へのアプローチは、これまでのリメイク・ヤマトのいいところを踏襲していて興味深いな、と思います。

今日はリメイク・ヤマトの劇中歌・主題歌について考えていきます。

〇リメイク・ヤマト テーマソング史

リメイク・ヤマトのテーマソングの歴史は、いくつかの過程を経ています。

初期『2199』はレコード会社のランティス中心で、現代アニソンで有名な作詞家やアーティストを集めて「『ヤマト2199』の主題歌」を作る方針を採りました。

テレビ版『2199』はソニー・ミュージック中心で、『ヤマト2199』とあまり関係のない歌をタイアップさせた側面もあるため、評価が難しいものとなってしまいました。

『方舟』以降は、西﨑彰司さん(ボイジャー)の存在感が増しています。『方舟』では、(テーマソングではないけれど)葉加瀬太郎さん、HATSとのコラボレーションが実現しましたよね。

『方舟』の主題歌は、作曲・宮川彬良さんによる「Great Harmony ~for yamato2199」でした。ここでリメイク・ヤマト史上初めて、(かつて「題名のない音楽会」で彬良さん自身が『ヤマト』音楽の特徴として挙げていた)”劇中音楽の作曲家と主題歌の作曲家が同じ”構図が、彬良さんの世代でも実現しました。その意味で『方舟』は、一つのエポックメイキングな映画だったと言ってもいいですね。

一方、『方舟』に続く『2202』では、また新たなアプローチが採られました。

第二~第六章までの主題歌は、S.E.N.Sprojectとのコラボレーションでした。S.E.N.Sとのコラボレーションでは、例えば第五章の「ようらんか」が羽原監督の”子守歌”とのリクエストから誕生したように、テレビ版『2199』のような歌ありきではなく、作品に対して主題歌を作るアプローチが随所に見られました。ただし個々の歌詞を読むと、これらの主題歌が本編の脚本を踏まえて作られたものであるとは断定できません。その意味で『2202』主題歌も、テレビ版『2199』同様に評価は難しいものになってしまいました。

ただし、『2202』主題歌にはもう一つの側面がありました。それが、第一章・第七章で用いられた「ヤマトより愛をこめて」です。ここでは新録音ではなく、旧作の音源がそのまま用いられました。

そして興味深いのは、作品の具体的な中身によって、この主題歌の歌詞を再定義した点です。例えば、「ひとりひとりが思うことは 愛するひとのためだけでいい」。この歌詞は、あるいは『2202』以前なら”愛する人のために自分の命を投げ出す”という解釈しかできなかったかもしれません。しかし『2202』以後は、”人間はそもそも、根本的に何かを愛して生きている(それが人間性だ)”との視点が加わったことで、別の解釈も可能になりました。

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〇『ヤマト2205』の主題歌

『2205』の劇中歌・主題歌は、『方舟』と『2202』の”いいとこどり”をしています。

まず、『2205』の主題歌は「愛は今も光」でした。


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宮川彬良さんが作曲をした楽曲が、エンディングを飾ったわけです。これは『方舟』から継承した、主題歌へのアプローチと言えるでしょう。音楽の側面からみたヤマトらしさである、”劇中音楽の作曲家と主題歌の作曲家が同じ”構図が継承されているわけです。

そして、『2205』の発進シーンで流れた「ヤマト!!新たなる旅立ち」。これも「ヤマトより愛をこめて」同様新録ではなく、オリジナルがそのまま流されました。

さらに「新たなる旅立ち」でも、歌詞の再定義が行われました。

ほんの数年前まで敵同士だった二人が、今は同じ艦に乗っている。いろいろあるけど、今はそれで十分では?――発進間近のヤマト艦内で、ぼそっと語り合うおじさん二人。

(「『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章-TAKE OFF-』劇場用パンフレット」宇宙戦艦ヤマト2205製作委員会、2021年10月、3頁。)

福井さんは「これが流れないと新たなる旅立ちにならん」とは思いながらも、「おそれも嘆きも心をはなれ」が現代社会(とそれを反映した『2205』本編)には「そぐわない」と考えあぐねていたようです*1。その中で「窮余の一策」として浮かんだアイデア*2、先ほど引用した部分。

すなわち、不安が続く時代の中のささやかな平和を歌い上げる歌として、「新たなる旅立ち」を再定義したわけですね。こちらは『2202』の「ヤマトより愛をこめて」から受け継いだアプローチであると言えるでしょう。

〇さらなる再定義に期待

このように、『ヤマト2205』のテーマソングは、「愛は今も光」が『方舟』を継承し、「ヤマト!!新たなる旅立ち」が『2202』を継承していると言えます。

とはいえ「ヤマト!!新たなる旅立ち」の再定義は、あくまで「窮余の一策」。それこそ『2202』にとっての「ヤマトより愛をこめて」のような、作品をあげての再定義ではありません。

そこで後章では、残る旧『新たなる旅立ち』のテーマソングである「サーシャわが愛」「星に想うスターシャ」の再定義がなされたらいいなぁ……と思っています。

傷つきながら さすらう人々に
やさしいその手を さしのべてくれた
もしも許されるものならば
この手で抱きしめて連れて来たかった

Source: https://animesongz.com/lyric/431/1231

特にこの辺りなどは、デスラーの歌として再定義できる余地が残されています。

実際に流れる可能性は高くないと思いますが、後章を観た後に聴くと違った情景が見える……そんな映画であれば嬉しいですね。

 

*1:同上、3頁。

*2:同上、3頁。