ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

「宇宙を旅する」ヤマトらしさとこれからの『ヤマト』

こんにちは。ymtetcです。

最近は、単行本化が決まった『Λ』を読み直しています。

さて、前々回の記事「「ヤマトが地球人類を救う」ヤマトらしさと「ご都合主義」 」の最後で、私は「宇宙戦艦ヤマトのコンパクト化」を主張しました。つまり、今後は劇場版を中心に新作を展開する方向に絞ってもよいと、私は考えています。「ヤマトが人類を救うことができた理由」を考えることには限界がつきまとうので、仮にその枠組みを踏襲するのであれば、本編そのものを圧縮してしまった方がよいとの判断です。

とはいえ、『宇宙戦艦ヤマト』の原点であり、ファンも慣れ親しんでいる「テレビシリーズ」を諦めるわけにもいきません。それこそ『Λ』が当初はテレビシリーズ用の脚本からスタートしたように、彰司さんたちもテレビシリーズを諦めたわけではないでしょう。そこで今日は、これまでの『宇宙戦艦ヤマト』作品の傾向から、テレビシリーズ『宇宙戦艦ヤマト』と劇場版『宇宙戦艦ヤマト』の展望を探ってみたいと思います。

〇「救う」と「旅する」

前々回までの記事で、私は『ヤマト』作品を「ヤマトが人類を救う」物語だと総括しました。ですが、現実の『ヤマト』作品が持っている”軸”はそれだけではありません。

たとえば、『ヤマト』作品を「ヤマトが宇宙を旅する」物語と読み解くこともできます。特に、第一作の『ヤマト』では「ヤマトが宇宙を旅する」要素が大きな魅力でした。また、新作『ヤマト』がたくさん作られるようになった『2199』以降は、「ヤマトが宇宙を旅する」要素に注力した新作(戦争モノではなく冒険モノとしての『ヤマト』)を求める声にも根強いものがあります。「宇宙を旅する」要素は、「ヤマトらしさ」の重要な一側面であることが分かります。

このように、『ヤマト』には「ヤマトが人類を救う」側面と「宇宙を旅する」側面があります。前者は戦争の側面が重視され、後者は冒険・航海の側面が重視されている、と言えるでしょう。

ですが、この二つの”軸”のバランスは、全ての作品で一定というわけではありません。すなわち前者は劇場版『ヤマト』で重視されるもの後者はテレビ版『ヤマト』で重視されるものなのではないでしょうか。

〇「救う」だけの劇場版と「旅する」テレビ版

これまでの『ヤマト』の中で、艦内ドラマに重点が置かれた作品がどれほどあったでしょうか。思い返せば、そのほとんどがテレビ版、すなわち最初の『ヤマト』と『2』、そして『Ⅲ』であったことに気付きます。酒を飲んだり、殴り合ったり、訓練をしたりするシーンは、ほとんどテレビ版の『ヤマト』にしかないものですよね。

また、これまでの『ヤマト』の中で、航路図が観客に向けた説明として取り入れられた作品がどれほどあったでしょうか。思い返せば、それもまたほとんどがテレビ版だと言えます。最初の『ヤマト』でも『2』でも『Ⅲ』でも、劇中に航路図が登場します。航路図を見ながら、「ヤマトが今どこにいて、どこに向かっているか」を観客と共有する要素は、ほとんどテレビ版の『ヤマト』にしかないものですよね。

こうして考えると、劇場版『ヤマト』はその尺の短さもあって「ヤマトが地球人類を救う」側面を相対的に重視しており、反面、テレビ版『ヤマト』はその尺の長さもあって「ヤマトが宇宙を旅する」側面にも目を向けていたと言えそうです。

であれば、今後の『宇宙戦艦ヤマト』についても同じことが言えるのではないでしょうか。

〇意識的に使い分けていきたい

『2199』以降に登場した『ヤマト』は、『2199』と『2202』がテレビフォーマット、『方舟』が劇場版フォーマットで完成しています。そしてどうやら、『2205』は劇場版フォーマットである可能性が高そうです。

私は、『2205』は劇場版フォーマットでやった方がいいと考えています。というのも、『2202』を観る限り、福井さんは「宇宙を旅する物語」があまり得意ではなさそう、むしろ「ヤマトが地球人類を救う」といった戦いの枠組みの中でドラマを描いた方が福井さんの良さが活きそうだ、と感じています。例えば、『2202』に航路図はほとんど登場しませんし、第10話の艦内ドラマも十分に機能させることができていませんでした。反面、古代進の物語としては『2202』もうまくやっているわけですから、作り手の良さや得意なことを引き出すことも、今後の『ヤマト』には欠かせないと考えます。

2時間で最後まで押し切れる劇場版と違って、最低でも3カ月~6ヶ月の付き合いになるテレビ版は、常にヤマトの現在地を観客に共有しておく必要があります。そうでなければ『2202』のように、観客はただ宇宙のどことも知れないところを飛んでいるヤマトを眺めつづけることになります。有り体に言えば、没入感が削ぎ落とされてしまうわけです。であれば、これからは、テレビフォーマットでは「旅する」要素を重視した、劇場版では「救う」要素を重視したドラマを意識的に作るべきだと考えます。

作り手には、特にテレビフォーマットでは「ヤマトが宇宙を旅する」要素を強化した方がいい(かもしれない)、ということに自覚的であって欲しいなと思いますね。