ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト完結編】冒頭のヤマト敗北を考える

こんにちは。ymtetcです。

3月12日の記事「「ヤマトが地球人類を救う」ヤマトらしさと「ご都合主義」」で、『ヤマト』には「『地球人類を救えないかもしれない』状況の克服物語」という一面があるんだ、と述べました。

今日はそこから話をぐっと展開させ、『完結編』冒頭の特殊性について考えてみたいと思います。

〇『ヤマト完結編』冒頭の悲壮感

完結編の冒頭を観た時、私はこれまでの『ヤマト』にはない”切なさ”のようなものを覚えました。それは一体、なぜなのでしょうか。

それは、「地球人類を救う」任務に従事していない(=地球人類の危機を背負っていない)ヤマトが、なすすべなく敵艦隊に敗北するシーンだったからだと考えます。

〇それまでの『ヤマト』における”敗北””ピンチ”

これまでの『ヤマト』でも、ヤマトの敗北やピンチは何度か描かれていました。ですが、その”敗北”や”ピンチ”の多くはヤマトが「地球人類を救う」任務に従事している時、すなわちヤマトが地球人類の危機を背負っている時に直面するものでした。いわば子どもたちが「ヤマトがんばれー!」と叫ぶような状況を描いており、時には反撃の前フリであることも少なくありませんでした。

それが、これまでの『ヤマト』だったのです。

〇『完結編』におけるヤマトの”敗北”

ですが、『完結編』の冒頭はどうでしょう。

災害調査のために銀河系中心部に派遣されていたヤマトが、偶然の積み重なった結果ディンギル帝国と出会う。そして、ディンギル艦隊が放ったハイパー放射ミサイルによってヤマトの全乗組員は死亡/仮死状態に陥り、ヤマトは宇宙に沈んでいく。

これをヤマトの視点で見れば、調査のために派遣された銀河中心部で、出会ったばかりの謎の艦隊になすすべなく敗北したことになります。『さらば』におけるゆうなぎや、『永遠に』の火星基地、『Ⅲ』のアリゾナよろしく、ヤマトはただただ当て馬のように敗北を喫したわけです。

〇「らしくない負け方」

『完結編』冒頭のヤマトは、一言でいえば「らしくない負け方」をしてしまいました。野球で言えば、かつてホームラン王をとったスラッガーが、真芯でボールを捉えたのに外野フライに終わった……。そんな切なさがそこにはありました。

地球人類の危機を救えないかもしれない、という緊張感もなく、ただそこで偶然出会っただけの艦隊に攻撃され、敗北する。それは、それまでの『ヤマト』の基本構造では見られなかったヤマトの危機でした。私はそこに”切なさ”を覚えたわけです。

〇応用可能性

とはいえ、その”切なさ”は長くは続きませんでした。紆余曲折の末にヤマトが帰還すると、そこからは「いつもの『ヤマト』」がスタートします。地球人類は危機に陥り、ヤマトは地球人類を危機に直面させている敵に戦いを挑み、打ち勝ちます。

そこで、長くは続かなかった『完結編』冒頭の空気感を、今しばらく持続させる方法を考えてみましょう。

そもそも、なぜ私はあのシーンのヤマトを観て、切なく感じたのか。それは、一時代の終わりを感じたからだと考えています。それまでのシリーズで無敵状態だったヤマトが、一瞬にして無力化された。私はそこから、ヤマトよりも強大な敵が現れた=ヤマトでは敵に勝てない、という構図を読み取ったのです。

要塞相手に苦戦することはあれど、艦艇との戦いでヤマトが敗れるケースは、それまでの作品ではほとんどありませんでした。敵艦は常に「紙装甲」であり、ヤマトは常に「神装甲」。ただの演出上の都合ではありますが、それでも、ヤマトが危機を乗り越え続けられた背景には敵艦に対する性能の優位性があった、と暗黙のうちに表現されていたと見ることができます。

ですから、これをひっくり返すことができれば、いつもと少し毛色の違う『ヤマト』が作れるのではないかと思うのです。すなわち、ヤマトが地球を何度も救って年月が経過した頃、ヤマトに対して圧倒的に優位な性能を持つ戦艦が、(アンドロメダのような味方側ではなく)敵側に出現する。老朽化したヤマトが艦艇同士の戦いで劣勢に立たされる様子を描ければ、これまでとは一味違うピンチが演出できるのではないでしょうか。

そして、ヤマトがそのピンチを乗り越えるための方策としては、艦艇としての純粋な性能差を頭脳で埋める。つまり、老朽艦なりの味のある戦い方で、そのピンチを乗り越えていくのです。先の野球の例を踏襲するなら、本塁打を打てなくなったスラッガーがベテランの技を活かして代打の神様として活躍する、そんなイメージです。

そうしてヤマトは最後の仕事を終え、そっとマイクを置くように地球防衛軍を去っていく。そんなオールドスタイルなラストも、それはそれで「ヤマトらし」くて良いのではないかと思います。

この話はリメイクシリーズを念頭に置いたものではありませんが、私はこの『2199』以来のシリーズに幕を閉じるとすれば、何らかの理由でヤマトが武装を解除する、特に大量破壊兵器たる波動砲を放棄することができれば、それは後味のよいラストになるだろう、と考えています。その点については、今回の話にも通じるものがあると思います。『完結編』のような派手な爆沈ではないラスト。それをヤマトらしく描くとすれば、私は「ヤマトが地球防衛の役目を終える」場面を描く他にない、と考えています。

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