ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

リメイクだけのファンも楽しめる?:『アクエリアス・アルゴリズム』

こんにちは。ymtetcです。

あのFGT2199さんが、『宇宙戦艦ヤマト 黎明篇 アクエリアスアルゴリズム』の紹介動画を公開されていました。

youtu.be

FGTさんの動画は作品に対する鋭い視線に時折クスリとさせる語り口が融合していて、いつも面白いですよね。

ところで、FGTさんも注目している点に、アクエリアスアルゴリズム』を楽しむ上で必要な予備知識、があります。これについては私も気になっていたので、今日はある仮説を述べてみたいと思います。

〇リメイクだけのファンも楽しめる?

今日の問いは「アクエリアスアルゴリズム』に旧作シリーズの予備知識は必要なのか?」です。

なお、FGTさんは、少なくとも『完結編』と『復活篇』の予備知識は必要だ(でなければ魅力が半分もしくはそれ以下になる)、と述べておられました。

私もこれには同感です。この作品を100%、120%楽しむためには予備知識が必要でしょう。

ただ、私は、アクエリアスアルゴリズム』をある程度楽しむ上では、必ずしも旧作シリーズの予備知識は必要ではないと考えています。少なくともリメイクシリーズの知識があれば、十分に楽しめる作品なのではないでしょうか。

〇ymtetcの成功体験

今回の仮説の背景には、ある成功体験があります。昨年12月、私が「『ヤマト復活篇』を「復活」させる方法」で紹介した成功体験です。

それは「スターウォーズを全く知らない知人に『フォースの覚醒』を見せた結果、見事シリーズにハマってくれた」経験。当該記事の記述を引用してみましょう。

以前私は、『スターウォーズ』を全く知らないという知人を『フォースの覚醒』(エピソード7)に連れていったことがあります(知らない方はすみません)。(略)すると、ルーク・スカイウォーカーハン・ソロは「何やら大物っぽいおじさん」として処理されていたものの、映画は楽しめたようでした。そしてその後シリーズを観て若き彼らの魅力に驚き、かえって『フォースの覚醒』の内容にショックを受けるまでに至りました。

今回、私が「旧作シリーズの予備知識がなくとも『アクエリアスアルゴリズム』は十分に楽しめる」と考えたのも、この成功体験に由来します。

〇ymtetcの成功体験は再現可能か?

しかし、今紹介した私の成功体験は、『スターウォーズ』を知る人なら違和感をおぼえたはずです。なぜなら『フォースの覚醒』(エピソード7)は、新主人公であるレイを軸に描く、新たな三部作の一作目だったからです。

翻って『アクエリアスアルゴリズム』は、確かに『黎明篇』の第一作目ではあるものの、主人公は旧主人公である古代進。この二作品は、比較対象にはなりません。

私の成功体験は、『アクエリアスアルゴリズム』では再現することができないのでしょうか?

ここでキーになるのがリメイクシリーズの存在です。

たしかに、全く『宇宙戦艦ヤマト』を知らない人がアクエリアスアルゴリズム』を楽しむのは、難しいと思います。なぜなら『アクエリアスアルゴリズム』は、『完結編』と『復活篇』の間にある古代進」と「宇宙戦艦ヤマト」の物語を描いているから。これは『スターウォーズ』に例えるなら、いきなりエピソード2やエピソード5を観るようなものでしょう。

ですが、リメイクシリーズを知っている人ならどうでしょうか。リメイクシリーズを知る人なら、「古代進」や「宇宙戦艦ヤマト」には馴染みがあります。もちろん、旧作世界の古代とリメイク世界の古代は性格も過去も異なりますが、根本にある思想や心根はかなり共通している部分があります宇宙戦艦ヤマト」も、波動砲が極端に嫌われている/いない点以外は、基本的には旧作もリメイクも同じように描かれています

この前提に立てば、リメイクシリーズだけを知るヤマトファンの人も、『アクエリアスアルゴリズム』の世界に入っていくことは可能なのではないでしょうか

〇『アクエリアスアルゴリズム』書籍版の工夫

アクエリアスアルゴリズム』書籍版は、冒頭、「水惑星アクエリアス宇宙戦艦ヤマト」と題した年表に始まり、「プロローグ」で『完結編』の沖田と古代の回想シーンを描いています。この狙いについて、著者の高島雄哉さんは、

『完結編』と『復活篇』を結ぶ物語は、あるいはひさしぶりにヤマトに触れる方にとっても――あるいは本作で初めてヤマトに触れる新世紀のファンの方にとっても――読みやすいように、年表を付し、冒頭のプロローグは沖田艦長と古代の対話から始まっている。

(「あとがき」高島雄哉著、アステロイド6協力『宇宙戦艦ヤマト 黎明篇 アクエリアスアルゴリズムKADOKAWA、2021年、334頁、太字は引用者。)

と述べておられます。

そして実際、この「プロローグ」には「読みやすいように」するための工夫があります。

 ――地球か。何もかも皆懐かしい。

 赤く焼けた地球を見つめながら死んでいったはずの沖田が、突如として古代たちの前に姿を現したのは、アクエリアスによる地球水没まで残り六日となった日の夜明けだった。

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『完結編』で蘇った沖田のドラマの起点を、リメイクだけのファンも含めた多くの人が知る、「地球か。何もかも皆懐かしい」に求めているのです。多くの人が知るシーンを起点に沖田の物語、古代の物語と繋げていくことで、本作は「ひさしぶりにヤマトに触れる方」や、あるいはリメイクシリーズだけを知るファンにも読みやすくなるように工夫しているのだと、私は考えます。

〇気軽に門を叩いて欲しい

以上のことから、私は『アクエリアスアルゴリズム』を楽しむために、予め旧作の知識は必要ではないと考えます。

例えば本作には、『復活篇』を知る人にはお馴染みの大村さんや真帆が出てきます。ですが彼らについて、予め知る必要はありません。なぜならどちらも、劇中の古代たちにとっては知らない人だからです。他にも徳川太助や北野哲、坂本茂など旧作ファンにとっては知っておいて欲しい名前もありますが、並行宇宙の『2205』では、彼らがもうすぐメインキャラクターの近くに躍り出てきます*1。本作では、冒頭の「主要登場人物」欄で軽く彼らの存在を押さえておけば十分なのではないでしょうか。もしも読み進めるうちに彼らのことを知りたくなったなら、その時はインターネットで調べればよいのです。

もちろん、物語の性質上「古代進」「沖田十三」「宇宙戦艦ヤマト」といった知識は最低限必要です。でもそれは、リメイクシリーズの知識でも十分に補えると私は考えます。

本作を面白いと思うかどうかは人それぞれですが、少なくとも多くの人にとって読みにくい作品ではないことは保証できます。まずはリメイクシリーズの知識だけでも持って、気軽に『アクエリアスアルゴリズム』の門を叩いて欲しいです。

〇おまけ

ここまでさんざん仮説を書いてきましたが、私はこれを実証する手段を持ちません。

ぜひリメイク世代の方々の感想を聞いてみたいところですが、それだけではなく……

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!?

鑑賞用、保存用とくれば、次は……ですね。

*1:北野だけ、少し事情が違いますね。