こんにちは。ymtetcです。
今日は『スターブレイザーズΛ』第20話で、気になったところについて書いていきます。
○ミハイルとセスの「時空結晶体」観の違い
まず読んでいて興味深いなと思ったのが、ミハイル(レトヴィザン)とセス(カーディナス)の時空結晶体に対する見方の違いです。
ミハイルは第20話で、時空結晶体のことを「人類を破滅に導く」ものだと語っていました。一方、第18話の回想シーンで、セスは時空結晶体のことを「人類の守護者」だと語っています。この違いは興味深いなと思います。
第18話で、セスが時空結晶体を「人類の守護者」だと語ったのは、時空結晶体がかつて恐竜を滅ぼした点に着目してのことでした。時空結晶体が恐竜を滅ぼすからこそ、人類はこの宇宙に誕生できるのだ、との視点です。なお、時空結晶体が恐竜を滅ぼしたことは、リンネ自身も第20話で言及しています。
しかしながら、恐竜を滅ぼすことのできる時空結晶体は当然人類を滅ぼすことも可能。それに、今まさに人類を滅ぼそうとしているセイレーネスもまた、時空結晶体との関わりが深いわけですから、ミハイルの「人類を破滅に導く」との指摘も正しいと思われます。
対比的でありながら、どちらが間違っているとも言えない両者の「時空結晶体」観。クライマックスに向けて、一つの軸になってきそうです。
○いかにして、トップネスたちは宇宙の輪廻を断ち切るか
「第一印象」の記事でも似たようなことを書きましたが、『Λ』第20話の面白みは、トップネスとその仲間たちとニルヴァーナの関係を半ば善悪の観点で捉えてきた読者に対して、揺さぶりをかけてきたところにあると思います。むろん、ニルヴァーナの関係者がユウの母・マヤを殺したのだとすれば「悪」っぽいのですが、それほど単純な善悪で捉えることは、難しいかもしれません。
というのも、リンネが語ったように、ユウとリンネたちは49回も繰り返されてきた宇宙で、繰り返しセイレーネスと戦い、宇宙は何度も何度も終わり、また生まれている。このような”宇宙の輪廻”ともいうべき(不幸な?)ループを断ち切ろうとしている組織こそがニルヴァーナであるとすれば、ニルヴァーナもまた正義に見える、というわけです。
ここから『Λ』がどう展開していくだろうかと考えると、私の中にはおおよそ二つの考えが浮かびました。一つは、共闘関係ではないにせよ、ニルヴァーナの活動とトップネスたちの活動を一致させ、両者共存のもとでハッピーエンドを迎えること。
そしてもう一つは、ニルヴァーナの目的を、ニルヴァーナではなくトップネスたちが達成することです。つまり、”宇宙の輪廻”をトップネスたちの手で断ち切るのです。
そこで利用可能だと思われるのは、これまでの『Λ』が積み上げてきた、トップネスたちの人間関係です。これを利用するのが最もシンプルかつ収まりのいい展開なのではないかと思います。
現状、『Λ』が積み上げてきた「襲来するセイレーネスをトップネスが迎え撃つ」構図は、物語の本筋からは離れつつあります。ともすれば、この構図で物語を進めてきた序盤の物語が、あまり意味のないものと考えられてしまいかねません。
であれば、序盤で積み上げてきた物語と人間関係があってこそ、トップネスたちがこの不幸な(?)ループを断ち切れたのだと展開していけば、何となく収まりはよくなります。「何一つ欠けても、ここには来られなかった」との感触を読者に与えたいところですよね。
ということで、第20話で気になることと、簡単に今後の展望までを書きました。ただ、書きながら「このループは不幸なのか?」との疑問も抱きました。インド哲学では「輪廻を断ち切ること」は素晴らしいこととされているわけですが、敢えてこのループを肯定する結末もあり得るのかな、とも思います。