ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

『ヤマト』、スピンオフに賭けろ!【これからの宇宙戦艦ヤマト】

こんにちは。ymtetcです。

前々回の記事「【黒歴史?】中学生・ymtetcの『ヤマト』観」にて、航宙特務隊様より以下のようなコメントをいただきました。

「福井ヤマト」の独自作品としてこの流れのヤマトを作る可能性があるのではないかと思うのですが、ymtecさんはどう思われますか?

『2202』『2205』と、リメイクシリーズはいまや「福井ヤマト」になりつつありますが、この流れを汲んで、福井脚本による何らかの独自の『ヤマト』をつくる可能性があるのではないか、とのご指摘です。

私はこれまで、『ヤマト』のスピンオフ作品は非現実的である、との立場でした。しかし、今回のコメントをいただいて、また違う側面も浮かんできました。

そこで今日は、これからの『宇宙戦艦ヤマト』、とくにスピンオフ作品のポテンシャルについて考えたいと思います。

〇『ヤマト』が外に広がっていくためには

『ヤマト』が従来のファンだけでなく、新しいファンを獲得していくためには、旧作の枠組みに囚われない新しい作品が必要です。

しかしそこで立ち塞がるのが、前回の記事で取り上げた「スターブレイザーズΛの現状に見る新『宇宙戦艦ヤマト』の難しさ」。

〇賭けに出る手もある

では、外=新規層に向けたアピールと、従来の『ヤマト』とのバランスをどのようにとっていくべきなのでしょうか。今回私の頭に浮かんだのは、「タイトルに『宇宙戦艦ヤマト』を掲げない」という賭けです。

タイトルに『宇宙戦艦ヤマト』を掲げることは、その作品が『宇宙戦艦ヤマト』のシリーズ作品であることを示す重要な「看板」になります。このタイトルを掲げることで、『ヤマト』を知る/好感を抱いている層に新作『ヤマト』の存在をアピールすることができる、多大なメリットがあります。

しかし、『宇宙戦艦ヤマト』そのものが古典も古典、現在は『エヴァ』でさえ古典の一つになっている現状、このタイトルは、場合によっては新規層を遠ざける要因になっているかもしれません。

宇宙戦艦ヤマト』のタイトルが悪いのではなく、作品をよく知らない人が抱く『宇宙戦艦ヤマト』に対する漠然としたイメージが、その人の『ヤマト』に対する興味を削いでいるのではないか、ということです。

京都アニメーションの試み

スピンオフと言えば、京都アニメーションが興味深い試みをしています。テレビシリーズのスピンオフ映画を、そのスピンオフ映画だけは違う監督の下で作る試みです*1。『2199』のスピンオフを榎本明広さんが監督したり、『2202』のスピンオフを小林誠さんが、『2205』のスピンオフをヤマトナオミチさんが監督したりするイメージと思ってもらえると、しっくりくるのではないかと思います。

そして、京都アニメーションが試みたテレビシリーズのスピンオフ映画の中で、とても大きな反響を呼び、従来のファンの枠組みを超えたヒットを見せたのが『リズと青い鳥』でした。今日は、そのタイトルに注目します。

リズと青い鳥』のタイトルには、テレビシリーズと原作のタイトル『響け!ユーフォニアム』が含まれていません。私はここに、この映画が従来のファンの枠組みを超えたヒットをした一つの秘密があると考えます。

私は、『響け!ユーフォニアム』のタイトルを2015年から知っていましたが、私は長くこの作品を敬遠してきました。タイトルから「鬱陶しくなるほどの爽やかな青春アニメっぽさ」が漂っていたからです。

しかし、『リズと青い鳥』のタイトルと予告編からは、そうした雰囲気は感じ取れません。むしろ重く切ない人間ドラマを予感させる編集となっています。

実際、テレビアニメの『響け!ユーフォニアム』の方でも、もちろん爽やかな青春アニメとしての一面はありますが、登場人物たちが人間関係で悩んでいる時間の方がずっと多い、タイトルから抱く印象よりも重たい内容の作品でした。


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このように、従来のシリーズの枠組み・イメージを超えようとする姿勢と、従来のシリーズの流れと良さを失わずにいる姿勢の両立が、従来のファンだけでなく、従来のファンを超えたヒットを生み出したのではないでしょうか。

〇『ヤマト』のタイトルを掲げない

従来のヤマトファンであれば、きちんと『ヤマト』公式がプロモーションをすれば、たとえタイトルに『宇宙戦艦ヤマト』がなくとも観に来てくれるでしょう。

宇宙戦艦ヤマト』をタイトルにした新作をこの10年作り続け、世に問うてきたリメイクシリーズですから、もう既に、潜在的なファン層を掘り起こし終わった可能性があります。

この状況では、もはや『宇宙戦艦ヤマト』をタイトルに掲げる必要は必ずしもないのではないでしょうか。宇宙戦艦ヤマト』の世界で、宇宙戦艦ヤマト』の作風でありながら、「ただタイトルに『宇宙戦艦ヤマト』が含まれていない」だけの作品を送り出す。そうしたリスキーなアプローチも、あるいは必要かもしれませんね。

*1:Free!』にとっての『ハイ☆スピード!Free! Starting Days-』、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』にとっての『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形』、『響け!ユーフォニアム』にとっての『リズと青い鳥