ymtetcのブログ

偶数日に『宇宙戦艦ヤマト』を考えるブログです。

【ヤマト2205】ヤマト艦隊の三層構造

こんにちは。ymtetcです。

宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』は、たくさんの人のツボをちょっとずつ刺激する映画だったと考えます。とりあえず今浮かんだところでいけば、『ヤマト』のメカファン、音楽ファン、キャラファン。音楽はともかくメカやキャラには様々な派閥があるわけですが、まるで『2205』はそれを網羅せんとするばかりに、あの濃密な90分へ様々な刺激を盛り込んでいた映画だったのではないでしょうか。

今日は特にキャラクターの世代に注目して、『2205』が「たくさんのツボをちょっとずつ刺激する」映画だった件について、考えていきたいと思います。

〇ヤマト艦隊メンバーの三層構造

シリーズ構成の福井晴敏さんは、『2205』について、「(登場するキャラクターの)どこかに必ずあなたがいる」と述べていました。実際にそうだったかどうかは議論の余地があるものの、確かに『2205』は、そうなるように工夫がされています。

例えば「ヤマト艦隊」と呼称される第65護衛隊には、三つの世代のキャラクターが揃っています。

まず芹沢、山南、バレルの「お偉いさん」トリオは、世代的に、ヤマト世代(おおよそ現51~60歳の世代)が感情移入しやすい存在です。特に山南は、古代進を導く「頼れる上司」として描かれ、しかも「昔はヤンチャしていた上司」のような振る舞いさえ見せるキャラクターとして描かれました。

偉くなるとつまりませんなぁ。

次に、古代進たち古参のヤマトクルーは、世代的に、ヤマト世代の子どもたち世代(おおよそ現21~30歳の世代)が感情移入しやすい存在として描かれています。私もこの世代ですが、若者としての一面と、少しずつ重い責任を背負うようになる大人としての一面が共存しているのがこの世代なのかな、と思っています。古代は特に、若者としての未熟な一面と、大人として成熟しつつある一面が共存していますよね。「こっちは経験者だぞ」の一言に、古代の”27歳らしさ”が反映されていると感じました。

なぜやる前に相談しない? こっちは経験者だぞ。

最後に、土門竜介たち新世代のヤマトクルーは、世代的には子どもたち世代よりもさらに若い世代、言うなれば「『2199』世代」(おおよそ現〜20歳の世代)が感情移入しやすい存在として描かれているように思います。

わかんないけど、俺たちと同じかもな。

〇世代をこえた普遍性の追求

ただ、このような三層構造をなすヤマト艦隊メンバーと観客の世代は、必ずしもはっきりと区分されるものではありません。

すなわち、ヤマト世代が古参ヤマトクルーたちに感情移入できないかと言えば全くそうではなく、子どもたち世代が新参ヤマトクルーたちに感情移入できないかと言えば全くそうではなく、ヤマト世代が新参ヤマトクルーに、子どもたち世代が山南たちに……と考えても、やはり感情移入や共感は可能であるように設計されているのです。

その秘密は、これらの三つの世代に割り振られたキャラクターたちが、世代的な「あるある」を踏襲しつつも、ある程度優秀な人間として描かれていることにあると思います。すなわち、一定数の人が登場するキャラクターたちに"憧れる"ことができるよう、キャラクターを造形しているのです。

例えばヤマト世代や子どもたち世代は、初めての経験に戸惑いながらも奮闘する新参ヤマトクルーにかつての自分自身を多少なりとも重ねることができる。逆に『2199』世代や子どもたち世代は、山南たちに多少なりとも「かっこいい大人」の姿を重ねることができる。そういった、観客を受け入れるキャパシティーの広さも、『ヤマト2205』にはあったのかなと思います。

〇おまけ:『2205』第1話の好きなシーン

今回の記事と関連して、最後に私のお気に入りシーンを紹介しておきましょう。

第1話のCパートです。

 

明るい曲調の「ヤマト乗組員の行進」に合わせてアスカ、ヒュウガの艦橋内が映し出され、各艦に誰が乗り組んでいるのかを示す。そして、真田のセリフから一気に不穏な空気へと転換し、いよいよヤマトが登場。サスペンス感のある音楽と共にヤマトの艦橋内が映し出され、新たな「第一艦橋メンバー」を表現しつつ……

司令席の山南と、艦長席の古代。古代、じっと前を見据えて……

ヤマトがゆっくりと足を止める。

第一話おわり。

 

ここが私はすごくお気に入りなんですね。

特に山南→古代とカメラが切り替わるところは、「ヤマトに(艦長とは別に)司令が乗っている」という感慨深さもありますが、やはりこの二人が『2202』第5話で対決していたからこそ、私はグッと来たのだと思います*1

『2199』の時の≪きりしま≫では、山南が艦長、沖田が艦隊司令でした。

つまり、

  • 『2199』きりしま:山南艦長、沖田司令
  • 『2205』やまと:古代艦長、山南司令

なわけです。

ヤマトにこの二人がこうして乗り組んでいる姿を見るのは、リメイクシリーズを追ってきた身としてはやはり、感慨深くもなりますよね。